CASE STUDY

食品のサプライチェーン最適化プロジェクト

メーカー、卸、小売のデータを総合的に解析することで食品の欠品と売れ残りを同時に最小化することに成功

Project Year: 2020

Client: 三菱食品株式会社様

※2020年に実施したPoCの内容を記載しています

食品流通業界を取り巻く環境

現在、食品流通業界において、フードロスが大きな社会問題となっており、年間1兆円に及ぶ食品ロスが生じているとも言われています。これは主に流通プロセスで発生しており、例えば需要予測が外れて食品を作り過ぎてしまったり、在庫を余剰に抱えた結果、賞味期限が切れてしまったりなど、食品の管理が適切に行われていないことが原因となっています。 フードロスの問題は、SDGsの中にも注力分野として盛り込まれており、世界的にも早急に解決が求められる喫緊の課題の一つです。

課題

フードロスが生じてしまう原因の一つが、食品メーカー、食品卸、小売、これら3者間で情報が分断されてしまっていることです。それぞれの判断で販売数や発注量を決めているため、各社の予測のズレが積み重なった結果多くの無駄が生じていました。 例えば小売が、特定の商品のセールを企画した場合などには、食品卸は供給を確保するために事前に在庫を積み増します。しかし、想定より売れなかった場合には、在庫が多く残り、賞味期限切れによるロスが発生するかもしれません。 また、食品メーカーが新商品を発売した際には、実績が無いことから販売量の予測が特に難しい上、小売側で新商品用の販売スペースが十分に確保できない場合など、在庫が多く残るリスクも高まります。

フードロス問題を解決するためには、この情報の分断をなくし、サプライチェーンを横断して、生産や注文を最適化していく必要があります。

課題解決に向けたアプローチ

  • サプライチェーンに関わる受発注や在庫等のデータを総合的に解析することで、食品業界における流通全体の最適化を目指しました
  • PoCに着手した当初は予測の精度が上がらず、実用化にはほど遠い状態でした。そこで総合商社のネットワークを活かし、グループ会社だけでなく、取引先からも幅広くデータを収集しました。店舗の販売計画や、倉庫からの出荷量や調達にかかる時間など、多種多様な情報をAIに学習させた結果、販売量のブレも考慮した適切な在庫量を推定できるようになりました

効果

  • 約10,000商品を対象とした実証実験において、物流センターの残在庫(滞留品等の不良在庫の類)を平均約3割(一部のカテゴリでは最大4割)削減させることに成功しました
  • 欠品率と残在庫削減は一般的に相反する関係にありますが、残在庫削減効果と同時に欠品率も低下させることに成功しました
  • 三菱食品が扱う全商品の残在庫を3-4割減らすことができれば300トンの食品ロス削減につながるという試算が出ています
  • また、フードロス問題を解決することで、食品配送に伴うCO2の削減効果も期待できます
  • MC Digitalは本PoCで得られた知見を基に独自AIエンジン(特許出願中)を開発しました。三菱商事の主導で顧客企業に対する在庫最適化ソリューションの開発プロジェクトが組成され、本エンジンは需要予測機能として採用されました。現在は、インダストリー・ワンがPMOとしてプロジェクト推進を担い、三菱商事、MC Digitalの3社共同で顧客の物流センターを対象に、本ソリューションの展開と利用拡大を推進しています。
案件担当者

中谷 大輔

荻野 将拓