CASE STUDY

太陽光パネルの発電量予測プロジェクト

ペナルティ費用の削減を目的とした、発電量予測誤差最小化の取り組み

Project Year: 2022

Client: 三菱商事株式会社様

電力業界を取り巻く環境

気候変動問題は世界中の産業、人々の生活が直面する喫緊の課題です。

2020年、政府はこの問題に取り組むために「2050年までに温室効果ガスの排出を全体としてゼロにする」という目標を掲げております。

三菱商事様としてもこの目標に貢献すべく、EX (エネルギー・トランスフォーメーション)、とDX (デジタル・トランスフォーメーション)の両面で新たな価値創出をすることを掲げておられます。

課題

EXの取り組みの一つとして再生可能エネルギー事業の拡大があります。電力は供給と需要を一致させる必要がありますが、再生可能エネルギーは発電量が自然状況に左右されるため、この調整は従来の発電方法と比べてより困難です。

更に、2022年にFIP制度と呼ばれる制度が導入されました。FIP制度において、発電事業者は事前に発電量の計画値を提出しなければなりません。そして、その計画値から逸脱した発電量を生み出すと、インバランスペナルティの支払いが課せられる可能性があります。

この制度により、発電量を正確に予測することがコスト削減の鍵となりました。

これらの状態から太陽光発電において、発電量をより正確に予測する可能性が模索されていました。

課題解決に向けたアプローチ

データが十分に蓄積されていない初期段階では、学習を必要とせず、数学や物理のルールに基づいて構築される工学モデルを利用しました。そして、ある程度データが溜まったタイミングで機械学習モデルに移行するという手法を採用しました。

工学モデルでは、太陽の方位・高度のデータを元に有効放射量を予測するモデル、パネルの温度を予測するモデル、この二つの出力結果を元に発電量を予測するモデル、という3段階のフローを含んだモデルを開発しました。

機械学習モデルでは特徴量エンジニアリングやハイパーパラメタチューニングなどの実験を50個程度検証し、その中で最も結果が良かったものを採用しました。

活用データ

  • 放射量、気温、雲量などの気象データ
  • 発電量のデータ

効果

  • 月次の予測では工学モデル・機械学習モデルともに、とある地点におけるMAE(平均予測誤差)を8%以内におさめることができました

  • また日時ベース予測においては、機械学習モデルが対象の4つの地点全てにおいて、75%以上の確率でMAEを0.1%以内におさめることができました

  • 精度の良いモデルを利用して発電量予測誤差を最小化することでインバランスペナルティによるコスト削減の効果が期待できます
  • 今回の知見を活かし、SaaS化や風力発電等他の再生可能エネルギーの発電量予測への応用等を検討しています
案件担当者

田中 宏明

ジワルコウスキ アルチョム

中村 駿佑